迫真の氷結晶

初投稿です。

  • HOME
  • 作品集
  • 生活系

小林深雪 泣いちゃいそうだよシリーズのメモ・感想その5 アンソロジー『初恋アニヴァーサリー』より『魔法の一瞬で好きになる』(小川凜 中学一年生)

2025-03-20
  • #生活
  • #読書メモ

<TODO: ここにヘッダ>

2008年4月出版 『初恋アニヴァーサリー』より、小林深雪『魔法の一瞬で好きになる』の感想。

(同じ話が2016年10月出版の『―泣いちゃいそうだよ― 魔法の一瞬で好きになる』に収録されているので、実際にはこちらだけを読んでます。)


本作は、凜の中学1年生の入学時からのお話。1作目「泣いちゃいそうだよ」の前日譚で、誰にも言えない初恋を1年間大切にあたためていた、その期間の短編ストーリー。

いわゆる「淡い初恋」ってそういうことかあ、と思わせるような、恋の落ち始めをじんわりと描いている作品。

一番好きだなあと思った文章がこれ。

なんで、そんなことずけずけと言うのよ!
大切に大切に、心の奥にしまっていた思いなのに!
萌にも、蘭にも、誰にも言わずに、心で育てていた花を、ふいに、土足で踏みつけられた気分だよ。こんなにくやしくて、悲しいことなんてない。

これは失恋して涙を流す凜の前に、河野が現れて、河野から「広瀬に失恋したんだろ」と言われる場面。
ここの文章は、触れたら壊れてしまうような繊細な気持ちがよく現れている、美しい文章だなと思った。

このシリーズを読んでいると、ありきたりだとは思うけど、つくづく、恋って病気でありバブルだなあと思う。
勝手に期待だけ膨らんでいき、失敗するとパンと弾けて、心に大穴を空けていく。
でも、何もしない後悔にも耐えられないので、何もしないわけにはいかない。

失恋で負けるか、後悔で負けるか、あるいは成就するか。
性来人が持つ感情のいたずらで、そんな、参加しようとも思っていなかったゲームに強制的に参加させられてしまう。

でも、恋をしている間の主人公には、夢と希望があり、燃えている。
そのおかげで学校生活がよりうまくいっている側面もある。無味乾燥とは程遠い人生。いいね。

このシリーズに出てくる主人公たちは、 何度も期待に胸膨らませて、必死に頑張り、何度も期待を裏切られ、打ちのめされ、何度も立ち上がっていく。そのなかで成長していく。

切なくもあり、熱くもある。


また本作では凜が小学生の時にいじめられていたエピソードが初めて具体的に仄めかされているので、凜の自信の無さにはどんなバックグラウンドがあったのか、小学生編を読んでみたい。(まだ読んでない)

あと、やっぱり好きなシーンだなと思ったのが、誕生日なのに元気がなく「生きてるのがイヤになっちゃって」と落ち込む凜を見かねた妹の蘭が、凜を元気づけようと必死に励ましの言葉をかける場面。こういう場面がいつも温かくほっこりしていて良いんだよね〜(しみじみ)

小林深雪先生の「きょうだいっていいよね」というメッセージがよく伝わってくる。


ほかの記事

迫真の氷結晶 © 2025