小林深雪 泣いちゃいそうだよシリーズのメモ・感想その5 アンソロジー『初恋アニヴァーサリー』より『魔法の一瞬で好きになる』(小川凜 中学一年生)
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2008年4月出版 『初恋アニヴァーサリー』より、小林深雪『魔法の一瞬で好きになる』の感想です。
(同じ話が2016年10月出版の『―泣いちゃいそうだよ― 魔法の一瞬で好きになる』に収録されているので、実際にはこちらだけを読んでいます。)
本作は、凜の中学1年生の入学時からのお話。1作目「泣いちゃいそうだよ」に続く前日譚で、誰にも言えない初恋を1年間大切にあたためていた、その期間の短編ストーリー。
よく「淡い初恋」と言われるけど、淡いってそういうことかあ、と思わせてくれるような、恋の落ち始めをじんわりと描いている作品。
一番「淡い」と思った場面はここ。
失恋して涙を流す凜の前に、河野が現れて、河野から「広瀬に失恋したんだろ」と言われる場面。
なんで、そんなことずけずけと言うのよ!
大切に大切に、心の奥にしまっていた思いなのに!
萌にも、蘭にも、誰にも言わずに、心で育てていた花を、ふいに、土足で踏みつけられた気分だよ。こんなにくやしくて、悲しいことなんてない。
触れたら壊れてしまうような、繊細な気持ちがよく現れている、美しい文章だなと思った。
そして凜は、初めての失恋によって、初めて、食べ物なんかでは埋められない寂しさを知る。
このシリーズを読んでいると、ありきたりだとは思うけど、つくづく、恋ってバブルだなあと思う。
勝手に期待だけ膨らんでいき、失敗するとパンと弾けて、心に大穴を空けていく。とってもリスキー。
でも、何もしない後悔にも耐えられない ので、何もしないわけにはいかない。
失恋で負けるか、後悔で負けるか、あるいは頑張って勝つか。
性来人が持つ感情のいたずらで、そんな、参加しようとも思っていなかった不利なゲームに強制的に参加させられてしまう。
やっぱり恋って病なんだなあ…
でも、恋をしている間の主人公には、夢と希望があり、燃えている。
そのおかげで学校生活がよりうまくいっている側面もある。恋は人を強くするのかな。
このシリーズに出てくる主人公たちは、
何度も期待に胸膨らませて、必死に頑張り、何度も期待を裏切られ、打ちのめされ、何度も立ち上がっていく。
そのなかで成長していくんだね。
そこが切ないし、熱いよね。
また本作では凜が小学生の時にいじめられていたエピソードが初めて具体的に仄めかされているので、凜の自信の無さにはどんなバックグラウンドがあったのか、小学生編にも期待が持たれる。
あと、やっぱり好きなシーンだなと思ったのが、誕生日なのに元気がなく「生きてるのがイヤになっちゃって」と落ち込む凜を見かねた妹の蘭が、凜を元気づけようと必死に励ましの言葉をかける場面。こういう場面がいつも温かくほっこりしていて良いんだよね〜(しみじみ)
小林深雪先生の「きょうだいっていいよね」というメッセージがよく伝わってくる。
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