小林深雪 『泣いちゃいそうだよ』シリーズのメモ・感想その1 - 『(1) 泣いちゃいそうだよ』『(2) もっと泣いちゃいそうだよ』
小林深雪の「泣いちゃいそうだよ」シリーズを最近読み始めたんですが、これがすごく好きで、宝物みたいに心にしまっておきたくなる場面や文章がたくさんあるので忘れないように、主に自分用に、メモしておこうと思います。
どんな作品?
もともと進研ゼミ中学講座の読み物として連載されていたものが文庫化されたシリーズ作品で、中学生の多感な時期に感じるあれこれが全部詰め込まれたような、盛りだくさんの青春・恋愛小説です。
全体的にテンポが良くて面白いです。人間関係のトラブルや将来への悩みや不安など、自分が中高生だった頃の気持ちを鮮明に思い出させてくれて、共感と懐古にひたれます。
(小学校中学年から読めるように) 全体的に平たい文章で書かれているのにもかかわらず、大人にも響くような、人生において本質的で大事なメッセージがふんだんに詰まっているように思えます。
このシリーズの好きな部分を挙げるとたくさんあるので、これについては後述します。
どの作品も基本的な構成としては中学生女子が主人公で(高校生編もある)、1年間が12章程度で描かれ、その内容は、友達、部活、勉強、恋愛、いじめ、学校行事、進路、家族のことなど様々です。
このシリーズの好きなところ
- 切ない!
- 心無い言葉に傷ついたり、他人と自分を比べて落ち込んだり、失恋したり、夢を失ったり、他人を妬んだり、進路に悩んだり、自分を理解してもらえないもどかしさに苦しんだりといった、今を必死に生きている多感な10代のキャラクターたちの切ないエピソードの数々に胸がきゅっと なります。
- 季節の自然風景の描写が綺麗。色彩や情緒が非常に豊か 🌸
- 思わずはっとするような美しい表現がたくさん出てきて、ときめきます。
内容の良さと同じくらい、ここもイチオシポイントです。
「こんなにシンプルな語彙でここまで美しい風景を描写できるものなんだ」と感動します。
- 思わずはっとするような美しい表現がたくさん出てきて、ときめきます。
- テンポが良い。面白い。ハラハラドキドキするような展開。
- 青春!尊く、たまらなく愛おしい
- 忘れていた子ども時代の気持ちを思い出させてくれる
- 夢とか、将来への不安や葛藤とか、劣等感とか、社会や大人への不信感とか、大人になって忘れてしまったような多感な頃の純粋な気持ちを思い出させてくれます。
- ほっこり温かい気持ちになれる
- 登場人物らがときに家族や友達を傷つけてしまったり、傷つけられたり、すれ違ったりする中で、お互いに相手を思いやったり愛おしく思う気持ちが育まれていき、その様子が見ていてとてもあったかく、優しい気持ちになれます。
- 生きる元気をもらえる
- 作中では良いことだけでなく悲しいこともたくさん起きますが、キャラクターたちは決して希望を捨てることなく力強く進んでいきます。その様子に「それでもなお世界はキラキラ・ワクワクに満ちているんだよ」という作者の一貫した強いメッセージが感じられて、元気をもらえます。
あと、「あとがき」も好きなポイントのひとつです。
作品を読んでいると「小林深雪先生は大人として本当にできた方だなあ、どういうふうに生きたらこんなに素敵な物語を書けるんだろう」と思わずにいられないのですが、あとがきでは影響を受けた本やおすすめの本の紹介があったりして、その答えをチラ見せしてくれます。
1作目のあとがきで「作家になりたいというお手紙をよくもらう」ということが書かれていて、初志貫徹、最近の著作として「作家になりたい」シリーズも発行されているので、ぜひ読んでみたいです。
そんな大好きな作品である「泣いちゃいそうだよ」シリーズを読んで、自分の心に残った場面や思ったことを忘れないようにメモしておこうと思います。ネタバレ注意。
今回は1作目と2作目のメモ。
===== メモここから =====
(1)泣いちゃいそうだよ
小川凜の中学2年生の話。
お気に入りのフレーズや印象的な場面
1. 六月の美しい風景
サー。細い銀色の雨に、街が淡く煙っている。
道端で揺れる、虹色の紫陽花が、ビー玉みたいな、雨の粒をはじいてる。
六月の雨は、なんだか優しい音楽みたいだ。
表現が美しすぎる…
宝物みたいにどこかにしまっておきたくなる文章。
シリーズを通して六月はグレイの雰囲気、曇った空気、雨、紫陽花がよく登場するので注目。
2. 優雅な朝食の風景
成績不振で吹奏楽部をやめさせられそうになっている気まずい朝食の場面になんだか憧れを感じた…。 (話の本筋とは無関係だけど)
というのも、この場面はつまり、区立中学に通い、庭付きの一戸建てに住み、朝食にハニーバタートーストとカフェラテを楽しんでおかわりを用意する余裕まであるゆったりとした時間を過ごす、優雅な中学生女子の生活だから。(母親に釘を刺され ている場面であることを除けば)
自分の中高生時代の朝といえばいつも遅刻しそうで、適当なパンとかご飯を胃に流し込んで急いで支度して学校に行くっていうバタバタの朝ばっかりだったので、うらやましい。(毎晩夜ふかししてるからいけないんだけど)
3. 青春すぎるフレーズ
「小川、夏休みのサッカー部の試合、応援にこいよな! 絶対だぞ。」
広瀬の思いがけない言葉が嬉しくて、しゅわっ、心の中でサイダーの泡がはじける。
(中略)
ときめきが心をくすぐって、夏の風に、ひまわりが揺れた。
こんなに爽やかな日本語ってあるんだ…
4. 失恋にたそがれる夏の終りの寂しい場面
九月の夕暮れは、ほんのり秋の香り。
季節は、駆け足ですぎて、中二の春も夏も、もう二度と戻らない。
もうすぐ、秋がくる。
秋が来たら、広瀬とすごした楽しかった春も夏も、過去になって、消えてしまうんだね。
凜が勝手に期待して勝手に失恋する場面で、夏の終わりという季節描写と相まってすごく寂しくて切なくて、印象的な場面に感じた。切ない…
(2)もっと泣いちゃいそうだよ
中3受験生になった凜の1年間の話。受験生の話ということで進研ゼミらしさが強めに出ている。(のでストーリーの面白さとしては1作目のほうが上かな)
お気に入りのフレーズ・印象に残った場面
1. 凜が容姿の陰口を聞いて泣いてしまう場面
言葉の殺傷能力の認識が未熟な子ども時代って、悪気もなくむき出しの鋭利な言葉を振り回してしまいがち。
その一方でその悪口を受ける側も、まだ耐性が低いので、大ダメージとなってしまう。
そう考えると子どもの世界ってかなり危険で恐ろしいんじゃないかな…。
2. 「鼓動が夜に溶けて、きゅんとハートにレモンを絞ったように甘い気持ちが胸に広がっていく。」
初めて広瀬に下の名前で呼ばれたときの凜のときめきを表現したフレーズ。
甘酸っぱさを表すとてもキレイな表現にびっくり。 冷静に考えるとよく意味がわからないけど とにかく字面が良すぎる。
3. 「その広瀬先輩のこと、去年、わたしも好きだったって知ってた?」
大好きな姉と同じ人を好きになってしまった妹の蘭。諦めて別の人を好きになったら、その相手もまた姉のことが好きだった。 仲良しの姉を憎めるわけもなく。。
うーん、つらい。これはいたたまれないよ
4. 「グレイがかったミルク色の空。こんな日は天使が空を横切っていきそう。」
2学期の終業式、クリスマス当日の空の描写。
小林先生の色彩表現は本当に綺麗で豊か。
いつも「こんな日本語ってあるんだ」とはっとさせられる。
5. 「いま、ものすごく落ち込んでるんだよ!」
推薦入試に落ちたばかりの凜が広瀬から理性的なアドバイスを受けた時の心情を描いた場面。
わたし、十分、がんばったよ。これ以上、がんばれって言うの?
わたし、拒絶されたんだよ。選ばれなかったんだよ。この高校に。
そう思ったら、もうがんばれない。わたし、そんなに強くないよ。
いま、ものすごく落ち込んでるんだよ!
落ち込んでいるときに正論なんて受け入れられない。そうだよね。
6. 「生きるってことは、毎日を少しでも昨日よりマシにしていくってことなんだから。」
ちょっと沁みる言葉だ。
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