小林深雪 泣いちゃいそうだよシリーズのメモ・感想② 6作目 かわいくなりたい
小林深雪 泣いちゃいそうだよシリーズの6作目『かわいくなりたい』のメモ。
小川凜の吹奏楽部・フレンチホルンパートの後輩で、二代目小川凜といった感じのキャラクター、藤井彩の中学2年生の話。
メッセージとしては、置かれた場所で咲きなさいというか、コンプレックスに折り合いをつけて前向きに生きよと訴えているように思う。
主人公の彩は、いつも周りから男扱いされるような、女の子らしさとは対照的といった感じのキャラクター。
本人はいつも明るくて元気なキャラクターを装っているが、それは本当は自信の無さの裏返し。最初から自分はお笑い系だからとアピールしておくことで、弱みにつけ込まれないように、自分が傷つかないように、保険をかけている。
わたしなんか、顔は不細工だし、成績もそれほどじゃないし、自分のレベルってもんをわかってるから、だいそれたことはしないの。
しかしそこに、あらゆる点で自分より優れた完璧な恋敵が現れて、その恋敵に意中の相手を奪われる事態が発生すると、自分を言いくるめることもできなくなり、劣等感に苛まれ、傷つき、悩む。その叫びが切実でとっても切ない。
わたしだって、美咲ちゃんみたいに、誰が見てもかわいいっていう顔に生まれたかったよ。
わたしだって、ほんとは、かわいくなりたいよ。
でも、どうしたらいいの? わたしみたいなかわいくない子は、どうやって生きていけばいいの? わたしだって、悩んでいるんだよ。
誰もわかってくれない。心の中なんて。見えもしない、ほんとのことなんて、誰 もわざわざ、見つけてくれない。
そう思ったら、瞳に涙が、じわっと溢れてくる。
がまんしなきゃ。わたしには、涙だって似合わない。
悩み続けた末に、転機が訪れ、ついに吹っ切れる。
「わたし、変わりたいんだ。本気で。」
ふっきらなくちゃ。
誰も助けてなんかくれないんだ。
自分の人生なんだもん。
誰も、自分の代わりなんかできないんだし。
強くならなくちゃ。自分で自分を救わなくちゃ。
落ち込んでる場合じゃないよ。
部屋もキレイに掃除して、勉強もして、フレンチホルンもがんばって、身だしなみにも気をつけて、今まで、手抜きだったぶん、もっと自分に手をかけるんだ。
もっとかわいくなりたい。
もっと自分に自身をつけたい。
もっと自分を好きになりたい。
脇道にそれた感想
水野美咲というキャラクターについて
水野美咲は、悪い噂ひとつで佐藤祐樹をとたんに好きじゃなくなったり、自分とデートさせるために祐樹をだましたりと、自己中心的で打算的、不誠実な、彩とは対照的なキャラクターとして描かれている。 でもときどき真面目で素直な一面も描かれていて、そこがちょっと憎めない。
後続の作品で部長になった水野美咲が登場するけど、そこでの姿は結構真面目でしっかり者の印象でちょっと見直すところがある。
このシリーズには根っからの悪意を持ったどうしようもない人間が登場しない。
諸々が最終的に良い方向に収束していくので、ほっこり、安心して読める。そこが好き。
物語の中でくらいは救いがあっ てほしい。
暴言
彩が好意を寄せる佐藤祐樹は、顔は彩の憧れの三島先輩によく似た美少年。しかし、態度と口が悪く彩に意地悪なことばかり言う。というか結構言い方がキツい。
でも、どうやら世の女性向け作品でもそのくらいの暴言は普通のレベルのようなので、顔が良ければなんでも許されるというか、なんかグロテスクだな…