小林深雪 泣いちゃいそうだよシリーズのメモ・感想④ 8作目 いっしょにいようよ
今作では、女子の山内真琴と男子の高島誠、同じマコトという名前の、中学二年の男女二人が主人公。二人の視点が交互に入れ替わって話が進む。
男子の視点が描かれるというのがシリーズでは新しい。
「ホンキになりたい」の短編でもそうだったけど、他の作品よりも読んでいて妙にしんどく感じた。正直後味はあまり良くない。
これまでの爽やかな青春の悩みとはちょっと違って、もっと病的な恋愛要素がメインで描かれている。
みんな頑張っているけど、どうにもうまくいかない。どうしていいか分からない。その行き詰まった感じが苦しい。切ないというよりしんどい。
ライバルの大村泉は全く悪者要素が無くむしろ魅力的なキャラクターだし、真琴の「付き合ったら友情が終わってしまう」という葛藤は今までよりも単純じゃない。
誠と泉は性格が真反対で壊滅的に気が合わないので、お互い無理に気を遣って、その摩擦で苦しみが生まれる。
一方で、誠と真琴は性格がよく似ていて何かとよく気が合う。
真琴は次第に誠を意識するようになるが、誠の方は鈍感で、泉のことで真琴に相談するくらいに無神経。誠の無神経さは真琴を傷つけていく。
真琴はこれまで「女の子らしさ」というアイデンティティを一切持ち合わせていなかっただけに、その反動からか恋心にひどく翻弄される。蝕まれる様子がいたたまれない。
誠への思いが植物のつるのようにどんどん伸びて、わたしの心に巻きついてしめつける。 いっしょに過ごした時間が養分になって、誠の言葉が、笑顔が、水になって。 そして、気がついたら、いつ のまにか思いが咲いていたんだ。
誠は、真琴の親友、優里から無神経さを咎められることで、真琴のことも泉のことも傷つけていたことを自覚し、罪悪感に苛まれる。
オレみたいなバカは、今すぐ凍死しちゃえばいいんだ。
この柄にもなく弱気なセリフに切実さが出ていた。
誠との中途半端な関係に耐えられなくなった泉は最終的に自ら誠と別れる決断をする。ああ、かわいそうに。
主人公の恋が実ってライバルが退くという結末は過去作もみんなそうだけど、過去に登場したライバルは全員一度は主人公を陥れようとする明確な悪役だったのに対し、今作ではそうではなく泉自体も非常に魅力的なキャラクターなだけに、そこが非常に切ない。(救いはないんですか→泉主人公の続編ありますねえ)
ストーリーでは泉と誠と真琴の間の葛藤やすれ違いがメインで描かれている一方で、学校生活や部活動、イベント事の描写が少ない印象を受けた。そういうのも見たかったけど、主人公が2人いる (3人と言っても良い) のでページが割けなかったのかもとも思う。
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